「シャッタースピード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
写真を撮るカメラを使ったことがある人は、ピンとくるかもしれません。でも、ビデオカメラにもシャッタースピードはあるんです。
今回はそんな「シャッタースピード」について、初心者の方にもわかりやすくお教えします!
シャッタースピードとは
シャッタースピードは、ズバリ「シャッターが開いている時間」のことです。
よく理解するには、まずカメラの仕組みについて知らないといけません。
ビデオカメラの仕組み
動画を撮影するビデオカメラと、写真(静止画)を撮るカメラ(スチールカメラ)は、「撮影する」という点では仕組みは同じです。なぜなら、ビデオというのは、写真が連続したものだからです。
テレビを例にとりましょう。日本でのテレビの映像は基本的に、1秒間に60枚の写真を連続して映し出しています。ちょうどパラパラ漫画のめちゃくちゃ早いやつ、と思ってください。
動画を撮影するビデオカメラも同じで、1秒間に60枚の写真を撮っています。「静止画」がものすごいスピードで連続して映し出されることで、私たちは動く映像として認識しているんです。
スチールカメラの仕組み
「動画」が「静止画(写真)」の連続なのであれば、「静止画(写真)」はどのようにして記録されるのでしょうか?
写真を撮るカメラ(スチールカメラ)には、カメラ本体とレンズの間に「シャッター」が付いています。シャッターはいくつかの羽が付いた窓のようなものです。この窓が開いている間だけカメラの中に光が取り込まれ、「静止画」として記録されるわけです。
このときの「窓(シャッター)が開いている時間」が「シャッタースピード」です。
スチールカメラは、1/1000秒や1/500秒というごく短い時間から、1秒や5秒、あるいは1分間といった長い時間まで、シャッタースピードの選択肢がいくつもあります。
ビデオカメラは「1/60」が基本
一方で、ビデオカメラのシャッタースピードは「1/60」(60分の1秒)が基本です。
なぜなら、ビデオの場合は1秒間に60枚の静止画を連続して記録(再生)するため、シャッタースピードが1/60秒以上になってしまうと、1秒に入りきらないからです。1秒あたりの静止画の枚数が少なくなると、映像に滑らかさが無くなってしまいます。
外国のテレビでは日本と違って、「1秒あたり30枚の静止画」という形式もあります。また、映画のフィルムカメラは、1秒あたり24コマで撮影しています。フィルムの映画が少し映像がカクカクして見えるのは、1秒あたりのコマ数がテレビに比べて少ないからです。それはそれでフィルムの味が出ていいのですが、映像の「滑らかさ」という点を見ると、ビデオカメラのほうが滑らかに見えるのは確かです。
シャッタースピードを変えると…
では、シャッタースピードを変えることで、何が変わるのでしょうか?
明るさ
シャッタースピードを変えることで、まず「明るさ」が変わります。
さっきも言ったように、シャッターは窓のようなものです。窓を開ける時間が長ければ、それだけ入ってくる光の量が多くなりますよね。
例えば、スチールカメラでシャッタースピードを1/500(500分の1秒)にした場合と、1/250(250分の1秒)にした場合。1/250秒は1/500秒に比べて時間の長さが2倍ですから、入ってくる光の量(明るさ)は単純に2倍になります。
同じように、「1/500秒」と「1秒」では、「1秒」の明るさは「1/500秒」の500倍です。
じゃあ、必ず500倍も明るい写真になるかというと、そういうわけではありません。写真の明るさを決める要素はほかにも「アイリス(絞り)」や「ISO感度(ゲイン)」、「NDフィルター」など、いくつもあります。それらの要素を組み合わせることで、写真の明るさは設計されるんです。
動きの表現
シャッタースピードを変えることで、「動きの表現」が変わります。
…どういうことでしょう?
まずは1枚の写真を考えてみましょう。スチールカメラでは、シャッターが開いている間に入ってくる光が「静止画」として記録されます。被写体が動いていた場合、シャッターが開いている間に動いた距離がそのまま「ブレ」として記録されるわけです。
例えば、シャッタースピードを1/4(4分の1秒=0.25秒)に設定したとき、0.25秒の間に被写体が5㎝動いていれば、写真には被写体が5㎝ブレて写ることになります。
それでは、映像の場合はどうでしょうか。ビデオカメラのシャッタースピードは1/60秒(60分の1秒)が基本になります。なぜなら、ビデオは1秒間に60枚の静止画を連続して撮影するので、1枚あたりのシャッタースピードが1/60を超えてしまうと1秒に60枚が入りきらないからです。
ビデオカメラでシャッタースピードを変える場合は、1/60よりも小さい値(1/100や1/250など)で設定します。シャッタースピードを短くすることで、1枚1枚の画にブレが無くなるのでキレのある映像になりますが、動きの滑らかさは逆に失われます。
いずれにしても、映像は写真と違ってシャッタースピードの変化が分かりにくいです。
では、どのようなときにシャッタースピードを変えるべきなのでしょうか?
シャッタースピードを使いこなす
「モーションブラー」をいかす
ビデオカメラで動きのあるものを撮影するとき、「モーションブラー」という現象が発生します。
「モーションブラー」とは、簡単に言うと「残像」のこと。「動きのあるものを動画で撮ったときに生まれる被写体のブレ」です。
「ブレ」と聞くとダメなように思えてしまいますが、実は動画ではこの「ブレ」があることによって、動きに滑らかさが生まれているんです。
ビデオ撮影では、1/60というシャッタースピードが基本になりますが、それを1/125や1/250などに設定すると、1枚1枚の静止画にブレが無くなり、キレが増します。一方で、動画としての「滑らかさ」は失われてしまいます。
これは「背景」にも言えることです。
例えば、リレーで走っている子どもを1ショットで撮影するとします。そのとき、走っている子どもの「背景」は流れ続けているので、「モーションブラー」の効果でぼやけて見えます。それによって、被写体である子どもを際立たせることができるんです。
また、雨や雪が降っているとき、通常のシャッタースピードであれば雨や雪が流れる「線」のように映し出されますが、1/250や1/500などシャッタースピードの値を小さくすることによって「線」が「点」として表現されます。
このように、「モーションブラー」の特性を知ることで、映像表現の幅が広がるんです。
「静止画」としても使う場合
ビデオカメラで撮影したものをあとで編集して、動画の一場面を「静止画」として切り出す場合は、シャッタースピードの値を小さくして撮影することでブレの無い「静止画」になります。
特にスポーツなど動きが激しいものを撮影するとき。通常のシャッタースピードで撮影すると、静止画にしたときに1枚1枚のブレが大きく、肝心の表情などがうまく写っていない場合があります。
そんなときはシャッタースピードを1/250や1/500などにすることで、「静止画」としてのクオリティも上がるというわけです。
「フリッカー」を抑える
蛍光灯が使われている部屋などでビデオを撮影したら映像がチカチカ点滅していた、という経験はありませんか?
これは「フリッカー」という現象です。
実は蛍光灯というのは、人間の目には分かりませんが、とても細かく点滅しているんです。これをビデオで撮影するとき、蛍光灯の点滅とビデオのシャッタースピードがかみ合っていないと、映像がチラついて見えてしまうんですね。
蛍光灯の点滅は、電源の「周波数」によって決まります。周波数というのは、「1秒間に波が何回繰り返されるか」を示したもの。日本では新潟~静岡を境にして、東日本が50ヘルツ、西日本が60ヘルツとなっています。
そこで、ビデオカメラのシャッタースピードが「1/60」だった場合、西日本では周波数とシャッタースピードが一致しているので問題ないんですが、東日本では合っていないのでチカチカ点滅して映ってしまうということなんです。
これを解決するには、ビデオのシャッタースピードを1/60から1/100に変えればいいんです。50ヘルツと1/100は周期が一致しているので、点滅を消すことができます。
なお、最近はLEDなども増えているので、以前に比べて蛍光灯による点滅は少なくなってきたように思います。
ですが、東京などの東日本で蛍光灯がある場所で撮影するときは、「周波数」のことを頭に入れておきましょう。周波数の影響で映像がチラついたときは、シャッタースピードを変えることで抑えることができますよ。
まとめ
- シャッタースピードは「窓(シャッター)が開いている時間」
- ビデオカメラでは1/60(秒)が基本
- シャッタースピードで「明るさ」と「動き」が変わる
- 映像の「残像」を活かそう!
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